公立の小学校で1年生の担任をしたことがありますが、ご両親たちはご自分のお子さんと他のお子さんは同じスタートラインに立っていると思っていらっしゃると感じました。
ところが、あるお子さんは厚い本をひとりでどんどん読めますし、あるお子さんは厚い本ではありませんがひとりでひらがなの本を読めます。片や、ひらがなが拾い読みのお子さんや、ひらがなが読めないお子さんもいます。
これは同じスタートラインではないと思いました。あまりにも違う!
この違いはどこから生じたのだろうか?教師4年目の私は必死に観察しました。
それで気がついたことは、小学校入学までの間にどのくらい読み聞かせをしてもらったかにあるのではないだろうか?ということでした。読み聞かせ、あるいは文字に対する興味が起こる環境があった場合は、早い時期にひとり読みが始まり、読めるようになるとその読み方がだんだん速くなり、たくさんの量をこなすことができるようになるということなのだろうと思いました。
乳幼児期の大切さを感じました。1年生の時のスタートラインがどこにあるかは、その後の進み方に大きな影響をもたらします。特に母語における違いはとても重要です。どんなこともこの母語を介して行っていくからです。
まだ、自分の子どもがいなかった私ですが、自分の子どもには読み聞かせをたくさんしてみようと心に強く決めました。では、どんな本を読み聞かせしたらいいのだろうか?と新たな疑問が湧いて来ました。というのは世の中には本当に多くの絵本があって、すべてを読み聞かせすることは無理だからです。そして、いろいろな種類の、様々な作家や画家の絵本を選ぶのがいいと結論しました。
やがて第1子が誕生すると、その道の専門の方たちが推薦している絵本、30冊を購入しました。毎日読んで聞かせました。3歳になるまでにこの30冊を何度も繰り返し読みました。同じ本を日に何回か読むこともありました。2歳を過ぎる頃には、本人が本を選んで持って来ては読んでとせがむようになり、1日中、本を読んでいた時期も有りました。(家事は手抜きをしました。笑)3歳になると、レベルアップした別の絵本、30冊を購入しました。6歳になるまでこの30冊を繰り返し読んで聞かせました。
この子は3歳頃になると、町の看板の文字が気になり出し、これは?この字は?と聞くようになり、ひらがなの拾い読みを始め、4歳になる頃にはあっという間にひらがなを全て読めるようになりました。それで、自分でもどんどん絵本を読むようになり、自分がしてもらったように、弟に読み聞かせをするようにもなりました。
小学生になってから、本は買い与えることはせず、図書館で借りて来ては自分で読むようになりました。もう、なめたり、食べたりしないので、図書館の本で大丈夫でした。読む力がついてくると、分からない漢字があっても、適当に読みとばしながら読んでいるようでした。あるいは想像しながら読んでいたのかもしれません。読む速度が半端でない子どもに成長していきました。
私の1年生の教室では、朝の会の時間にできる限り子どもたちに読み聞かせをしました。とにかく子どもたちはこれが大好きでした。「今日はここまで。」と言うと、「えーっ、もっと〜!」と返ってきます。もったいぶって本を閉じるときの気持ちを楽しませてもらいました。「しめしめ、本の世界に入り込んでいるぞ〜。」と。
ある本に、自分で読むのと読み聞かせは別物なので、6年生でも読み書かせは必要だとありました。だから、お家でも読み聞かせをなるべくして頂けるようにお願いし、ついでに上のお子さんにもとお勧めしました。他の学校で1年生の担任になった時は、週末の宿題に「読み聞かせをしてもらう」という宿題を必ず入れました。「この宿題がなかったら、読み聞かせはやらなかったと思います。この宿題ののおかげで子どもとの楽しい時間が与えられて良かったです。」と言って下さったお母さんがおられました。
1年生のスタートラインは親子で培っていくようなものと思います。今、小さいお子さんを子育て中のお母様にエールを送ります。そして小学生のお子さんのお母様にも、同じようにエールを送ります。